『都市芸研』第二輯/王安祈教授を迎えて

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21世紀COE演劇研究センター国際研究集会報告 王安祈教授を迎えて

平林 宣和

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館は、2002年度より文部科学省の21世紀COEプログラムの助成を受け、大学院文学研究科芸術学(演劇)専攻と共同で演劇研究センターを設立、2002年度末にアジアおよび欧米の研究者を招いて国際研究集会を開催した。この研究集会の実施に際して、演劇研究センターの依頼を受けた中国都市芸能研究会は、集会への中国演劇研究者の招聘、および二日間にわたる分科会の運営に関して全面的に協力を行った。

研究者招聘については、開催までの準備期間が短かったため大陸からの招聘は断念、国際的な学術交流に耐えうる深い学識と広範な研究領域という二つの条件を兼ね備えた研究者として、台湾清華大学の王安祈教授に白羽の矢が立った。王安祈教授は大学における本業に加え、台湾の国立京劇団である国光劇団の芸術総監督も兼務しているため、当初は多忙なスケジュールの間を縫っての来日が可能かどうか危ぶまれたが、他の行事を入れずに数日程度の滞在ならば、という条件で最終的に要請に応じて頂いた。

王安祈教授の研究業績に関しては、すでに広く知られていると思われるが、明清伝奇を中心としたいわゆる古典戯曲の研究に加え、近年では京劇をはじめとする現行の伝統演劇についての論考も数多い。さらに上記のごとく国光劇団の芸術総監督を務めるかたわら、多くの劇作品を執筆し、アカデミズムの枠を超えて芸術創作、および文化行政においてもその手腕を存分に発揮されている。

国際研究集会は五日間にわたって開催されたが、このうち王安祈教授が参加されたのは三日目の全体集会に始まる後半の三日間である。研究会からは、全体集会のために台湾における中国伝統演劇研究の概括的報告を、また分科会については台湾の伝統演劇、特に京劇の現況報告を、あらかじめお願いしていた。研究集会における正式な発表タイトルは以下の通りである。

2003年3月14日(金)全体集会:
「戯曲在台湾五十年来之研究成果(摘要)」
3月15日(土)分科会1:
「戯曲在台湾五十年来之研究成果」
3月16日(日)分科会2:
「伝統與創新的廻旋折衝之路-台湾京劇五十年」

全体集会は国内外の研究者が各国各地域の演劇研究の現状を報告しあう、という趣旨のもとに行われ、王教授は二番目の発表者として、台湾における中国伝統演劇研究の現状を、前半は通史的に、後半は個別研究の内容に即して報告されている。また各分科会においては、上記の各テーマを巡って、通訳を交えずに活発な対話が行われた。この時の発表原稿に関しては、15日分が演劇研究センター2003年度紀要に邦訳の上掲載、また本誌には16日分科会の原稿が原文のまま掲載されている。本誌上での公開の要請に対しご快諾くださった王安祈教授、および演劇研究センターにこの場を借りて深く御礼申し上げる。

なお、今回の研究集会に際し、王教授招聘の実務は当時文学部助手であった三須祐介が担当、発表レジュメは山下一夫が翻訳した。また分科会当日の各種事務は池田智恵、戸部健の二人が当たり、さらに中国都市芸能研究会のホスト側としての対応は、千田大介、二階堂善弘をはじめとする研究会メンバーが各々担当している。