『都市芸研』第二輯/芸術研究院戯曲研究所所蔵影巻目録

芸術研究院戯曲研究所所蔵影巻目録†

北京にある芸術研究院戯曲研究所には、百種余りの影巻が所蔵されている。中核となっているのは、1931年に創設された北平国劇学会図書館の旧蔵資料である。これは、斉如山・傅惜華・梅蘭芳などの寄贈によって成立した伝統劇の台本を主とする様々な演劇資料のコレクションで、1934年までに整理された分は『北平国劇学会図書館書目』（三巻、傅惜華編、北平国劇学会発行、1935年）として目録が出版されている。その下巻の「影書類」に、多数の影巻が著録されているが、そのほとんどが戯曲研究所図書室に設置されているカード目録の中に探し当てることができるのである。他にも、1934年以降北平国劇学会の収蔵になったか、あるいは別ルートで戯曲研究所の所蔵になったものと思われる、『書目』未載資料も散見される（多くは程硯秋旧蔵書）。

なお、『書目』では「斉如山旧蔵」となっているものが、カード目録ではすべて「梅蘭芳旧蔵」になっている。しかし、実際に請求して調査したものについては、すべて「斉如山蔵」の印が認められた。周知の如く斉如山は梅蘭芳のブレイン的役割を果たした演劇作家・研究家であるが、解放後は国民党とともに台湾へ移っていることから、おそらくカード目録作成に際して一定の政治的配慮のもとでこうした操作が行われたものと思われる。

この戯曲研究所蔵影巻資料は、中央研究院歴史語言研究所所蔵分と並び、清代のテキストを多く含む民国時期の収集資料として、影巻を研究する上で大変貴重なコレクションであるといえよう。また程硯秋は影巻をもとに京劇『六月雪』を上演し、斉如山も影巻の影響下に成立した京劇『混元盒』を改編したとされるが、ここに含まれる両者の旧蔵影巻などはその際に直接参照されたテキストである可能性が高く、民国期における京劇研究の上でも重要な資料となっている。

所蔵資料の調査は2001年８月に行ったが、その際は時間的な制約もあり、実際に目を通して検討することができたのは全体の中ではごく一部分に過ぎない。以下に示す目録は、戯曲研究所図書室に設置されていたカード目録を、『北平国劇学会図書館書目』と付き合わせて作成したもので、今後研究していく上での参考資料とするものである。

なお、一部の梅蘭芳旧蔵本については、目録には掲載されていても、実際には梅蘭芳記念館に移管されたものもあるというが、今回の調査では確認できなかった。また芸術研究院は2002年に移転し、所蔵資料は整理が終わるまでの数年間、事実上閲覧不能となっている。整理終了の暁には、戯曲研究所図書室は芸術研究院図書館へと改組されるということである。

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